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「やあ、来てますね」
「いや、危険はまづない見込だ。だが、何と云つたらいゝか――」
「よし!」
房一はふりかへつた。
と、云つた。彼は殆ど房一の前に立ちはだかつた恰好だつたが、もぢもぢして、何だか自分を小さく感じていた。房一と目を合せると、すぐに外らせて、急にぐつたりとした様子になりながら、
「ですが、何とも手のつけやうがない」
「どうも御苦労さま、暑いところを」
「さうだ、鍵屋の法事へ行くんでね。さつきは、君にさう云ふのを忘れていたが――まあ、上りたまへ」
その時、練吉はぐつと盃をつきつけた。
「いや、あれは私が勝手に頼んで来てもらつたんですからな、御心配はいりませんよ」
「どうでした」
かうして、びつくりするほど冴えた、明い日がやつて来た。いや、それは昨日も一昨日もその前も、かういふ日がつゞいていた。だのに、やはり、今日又新しく特別にとび切りにやつて来たとその度に思はせるほどの快い日だつた。どこもかしこも透き通るやうで、はつきりし、乾いた空気がふはりと頬のあたりに触れ、どこからかつんとする気持のいゝ山の匂がやつて来た。